三島由紀夫の名言30選｜心に響く言葉

(1) 人間に忘却と、それに伴う過去の美化がなかったら、人間はどうして生に耐えることができるだろう。

(2) 精神を凌駕することのできるのは習慣という怪物だけなのだ。

(3) われわれは自分の弱さをいやがる気持ちから人の長所をみとめる。

(4) 恋愛とは、勿論、仏蘭西（フランス）の詩人が言つたやうに一つの拷問である。どちらがより多く相手を苦しめることができるか試してみませう、とメリメエがその女友達へ出した手紙のなかで書いてゐる。

(5) 世界が必ず滅びるといふ確信がなかつたら、どうやつて生きてゆくことができるだらう。

(6) 女性はそもそも、いろんな点でお月さまに似てをり、お月さまの影響を受けてゐるが、男に比して、すぐ肥つたりすぐやせたりしやすいところもお月さまそつくりである。

(7) 決定されているが故に僕らの可能性は無限であり、止められているが故に僕らの飛翔は永遠である。

(8) 人間はあやまちを犯してはじめて真理を知る。

(9) 生まれて来て何を最初に教わるって、それは「諦める」ことよ。

(10) 精神分析を待つまでもなく、人間のつく嘘のうちで、「一度も嘘をついたことがない」といふのは、おそらく最大の嘘である。

(11) 法律とは、本来ごく少数者のためのものなのだ。ごく少数の異常な純粋、この世の規矩を外れた熱誠、……それを泥棒や痴情の犯罪と全く同じ同等の《悪》へおとしめようとする機構なのだ。

(12) 無神論も、徹底すれば徹底するほど、唯一神信仰の裏返しにすぎぬ。無気力も、徹底すれば徹底するほど、情熱の裏返しにすぎぬ。

(13) 老夫妻の間の友情のようなものは、友情のもっとも美しい芸術品である。

(14) 人間を一番残酷にするのは　愛されているという自信だよ。

(15) 不安こそ、われわれが若さからぬすみうるこよない宝だ。

(16) 感傷といふものが女性的な特質のやうに考へられてゐるのは明らかに誤解である。感傷的といふことは男性的といふことなのだ。

(17) 幸福つて、何も感じないことなのよ。幸福つて、もつと鈍感なものよ。幸福な人は、自分以外のことなんか夢にも考へないで生きてゆくんですよ。

(18) なぜ大人は酒を飲むのか。大人になると悲しいことに、酒を呑まなくては酔へないからである。子供なら、何も呑まなくても、忽ち遊びに酔つてしまふことができる。

(19) 軽蔑とは、女の男に対する永遠の批評である。

(20) この世のもっとも純粋な喜びは、他人の喜びをみることだ。

(21) 何か、極く小さな、どんなありきたりな希望でもよい。それがなくては、人は明日のはうへ生き延びることができない。

(22) 女を抱くとき、われわれは大抵、顔か乳房か局部か太腿かをバラバラに抱いてゐるのだ。それを総括する「肉体」といふ観念の下（もと）に。

(23) 人生が生きるに値ひしないと考へることは容易いが、それだけにまた、生きるに値ひしないといふことを考へないでゐることは、多少とも鋭敏な感受性をもつた人には困難である。

(24) 忘却の早さと、何事も重大視しない情感の浅さこそ人間の最初の老いの兆しだ。

(25) 男の嫉妬の本当のギリギリのところは、体面を傷つけられた怒りだと断言してもよろしい。

(26) 幸福がつかのまだという哲学は、不幸な人間も幸福な人間もどちらも好い気持にさせる力を持っている。

(27) 戦争が道徳を失はせたといふのは嘘だ。道徳はいつどこにでもころがつてゐる。しかし運動をするものに運動神経が必要とされるやうに、道徳的な神経がなくては道徳はつかまらない。戦争が失はせたのは道徳的神経だ。この神経なしには人は道徳的な行為をすることができぬ。従つてまた真の意味の不徳に到達することもできぬ筈だつた。

(28) 美しい女と二人きりで歩いてゐる男は頼もしげにみえるのだが、女二人にはさまれて歩いてゐる男は道化じみる。

(29) 人生とは何だ？　人生とは失語症だ。世界とは何だ？　世界とは失語症だ。歴史とは何だ？歴史とは失語症だ。芸術とは？　恋愛とは？　政治とは？ 何でもかんでも失語症だ。

(30) 自分を理解しない人間を寄せつけないのは、芸術家として正しい態度である。芸術家は政治家じゃないのだから。